定性推論

1. 定性推論の研究の目的
動的に変化するシステムのメカニズムをコンピュータプログラムが「理解」したり,「推論」したりすることによって,さまざまな応用問題(教育,診断,設計,制御,…)を知的に解決できるようにすること.
換言すれば,コンピュータの「理解」,「思考」,「表現」を人間の「理解」,「思考」,「表現」にできるだけ近づけようという試み.
2. 基本的なアイデア
人間が動的なシステムを理解するときは,状況を定性的に理解して「イメージ」(概要の理解)を構築してから,詳細な計算を始める→実際どのようなメンタルプロセスが働いているか解明し,そのプロセスをプログラムで模倣する.実際には,解明は困難であるから,研究者の直観に基づいてプログラムを構築し,その妥当性を検証する(analysis by synthesis).
3. 基本的な手法
状況の記述(例えば,“How things Work”)から,システムの挙動を理解し,応用問題を解決するまでのプロセスを実行できる知的システムを構成する.このプロセスには,次のようなステップが含まれている.

  • 状況→モデル:状況を理解するためのモデルを構築する.
  • モデル→因果関係:モデルに含まれる因果構造を抽出し,理解の助けとする.
  • モデル(+因果関係…)→挙動:モデルから導出されるいろいろな挙動を(定性的に)予測する.
  • モデル×パラメータの増減→挙動の変化:パラメータを変えたときモデルの挙動がどう変わるか予測する.
  • モデル×タスク→解答:故障診断,設計,制御,教示

4. 出口(応用)

  • エンジニアのワークベンチ(ビジョン) [Abelson 1989]
  • 教育(middle schoolレベル) [Forbus 2005]

5. トピック

  • 定性的なモデリング
  • 因果解析
  • 定性微分方程式と定性シミュレーション
  • 比較解析
  • 力学系の理論と挙動の自動解析
  • 形状の相互作用の解析―計算運動学
  • 自動モデリング
  • 定性推論の応用

6. 研究の流れ

参考文献

  • [西田 1993] 西田豊明,定性推論の諸相,朝倉書店,1993.
    http://www.asakura.co.jp/books/isbn/978-4-254-12621-1/
  • [Kuipers 1994] Benjamin Kuipers, Qualitative Reasoning, The MIT Press, 1994.
    http://mitpress.mit.edu/catalog/item/default.asp?ttype=2&tid=12951
  • [Abelson 1989] Harold Abelson, Michael Eisenberg, Matthew Halfant, Jacob Katzenelson, Elisha Sacks, Gerald J. Sussman, Jack Wisdom, Kenneth Yip: Intelligence in Scientific Computing. Commun. ACM 32(5): 546-562 (1989)
  • [Forbus 2005] Kenneth D. Forbus, Karen Carney, Bruce L. Sherin, Leo C. Ureel II: VModel: A Visual Qualitative Modeling Environment for Middle-school Students. AI Magazine 26(3): 63-72 (2005)