Kendon 1967

対話(2人会話)における注視(gaze)方向の機能の分析を扱った論文.

  • 対話者を「p」さん(論文における議論の対象になっている人,話者かもしれないし聞き手かもしれない),その相手を「q」さん,とラベルづけている.pさんの注視は,q-gaze(pはqを見つめている)と,a-gaze(pはqを見ていない)に大別される.
  • Kendon (1967)で収集された観察対象は,オックスフォード大学の学部生13名(うち3名が女性)が参加した7セットの会話の音と映像の記録.各ペアは相互に初対面であり,知り合いになるよう指示された上で,30分間テーブルに向かい合って座って自由会話を行う.テーブルの端には鏡が置かれ,話しているときの二人の顔表情が,一人については直接,もう一人については,鏡像を同時に1台のカメラで撮影できるようにセットされた.分析は最後の5分間の会話区間から取られた6個の会話サンプルの分析に基づいている.7番目の会話からのサンプルは,最初と最後の10分から採取された7分,9分の2つの区間からなる.
  • qを注視するために費やされた時間は20%~70%までの幅があったとKendon (1967)に報告されている.さらに,14例のなかの11例では,pがqを注視しているのは話している時間の半分未満の時間であった.一方,9例では,聞いている時間の半分以上の時間にわたってqを注視していたという.
  • 平均のq-gazeは話しているときより沈黙の間の方が長い傾向にあった.また,沈黙しているときは,q-gazeの方がa-gazeよりも長かった.話しているときは,その逆の傾向があったという.
  • 聞いているときは,pは相手(q, 話し手になっている)のほうを非常に長くq-gazeし,時たまみじかいa-gazeがはさまれる.話しているときは,pはq-gazeとa-gazeをより均等にさせていた.そして,a-gazeは聞いているとき依り,長くなっていたという.
  • 実験データで,注視の傾向はパートナーに依存することが示唆されている.KA(男性)は2回登場するが,T相手のときは,聞き手になっているときq-gazeの平均は長い(7.04half sec)が,W相手の時は短い(4.04half sec).
  • Tのq-gaze平均長は7.98 half secであったが,Wのq-gaze平均長は3.04half secしかなかった.
  • 相互注視についてはペアごとに大きなばらつきがあった.より詳細な分析は後刻.
  • NLとJHという参加者の会話を詳細に記録した図(論文[Kendon 1967]のFig. 1)が示されている.はじめはNLが話してから次にJHが発話する.
  • NL(男性)が話しているときは頭が揺れていたが,聞き手に回ると止まっている.
  • JH(女性)は,フレーム362まではNLを長い間注視していたが,やがてうつむきかげんになり,相手から視線をそらして,そのタイミングをはじめからわかっていたかのように話し始めている.
  • 発話の交代が起きるとき,95発話のうちの70%以上はa-gazeではじまった.
  • そして長い発話がq-gazeで終わったのが発話の半分以下になって参加者は4人にとどまった(残りの9人,通算だと10人)は,発話の半分以上がq-gazeで終わった.
  • Kendonは次のような解釈を示している.長い発話をするとき,発話者は発話を始める前に,自分の注意をパートナーから外して発話の準備(プランニング)をしている.長い発話の終わりに近づくと,choice-pointに近づく,choice-pointでは,(長いこと聞き手であった)パートナーの振る舞いを探る(information seek)ために,パートナーを注視する.
  • 話者のそうした動きは,聞き手(次話者)に使われて,話者の動きを調整するのにつかわれる.つまり,聞き手が視線をそらすことにより次話者として行動するために準備をはじめたことを現在の話者に知らせている.
  • 次話者は現話者に目を向けて,現話者が実際に発話をやめ,次話者の話を聞く体制に配置つつあることを確認する.発話者の視点に立つと,発話者はこのようなプロセスを経て発話権を聞き手に譲ったことになる.
  • この解釈が正しいなら,p(現在の発話者)が発話の終わりにq(現在の聞き手)をみたら,qは間髪を入れず発話をし,q-gazeをしなかったら,qが発話を始めるまで間が開くはず.
  • 論文[Kendon 1967]中のtable 4はそのような実験データが得られたことを示している.
  • 今度は長い発話の間の注視の方向について.pの発話の構造と,pが注視している者の間に関連性があるかどうか?まず発話速度と注視の方向について.発話の計画が立てられていないときは,たどたどしく(unfluentに)なる.発話の計画をたてるために,発話者はq-gazeをしないはず.実験データでは,lookingのときfluentである.3/4の発話区間で,lookingのときの方がnot lookingのときより発話が速くなっていた.(b) 円滑な発話,躊躇のある発話,休止,視線の向き.pは円滑な発話の時は躊躇した発話のときより頻繁にqを注視する.pは発話フレーズを終了するときは休止のときより頻繁にqを注視する.
  • 休止と躊躇の違い(Kendon 1967, p. 40, Fig. 3).休止では,pは休止の直前でqを注視し,休止の途中でだんだんqから目をそらしていく.躊躇による休止では,pは休止の前にそれほどqを注視するわけではない.
  • pは円滑な発話を再開するにつれ,qを見返し,躊躇が終わって発話計画ができると,qの様子を見守りつつ,発話を進めていく. Kendon (1967, p. 41)
  • 話者は発話の区切りで自分の発話が聞き手にどう受け入れられたかを点検している.その点検はまた聞き手に対するシグナルにもなる.
  • レーズの切れ目で,話者pが聞き手qから実際に随伴的な応答を受け取っているかどうか,pの発話構造と,qから発っせられている随伴シグナル(accompaniment signals)の関係を調べている.
  • その結果,48%の随伴シグナルは,フレーズ境界にある休止区間で起きていることが分かった.一方,pの発話が(短い中断後)再開されるようなときは,qからの随伴シグナルはほとんど発生しなかった.
  • 発話者が目をそらすのは,発話権を守りつつ,体制を立て直すため.長い発話では,これが必要になる.5秒に満たない短い発話ではそれは不要.
  • 今度は短い発話に関連した注視の分析.短い発話は,(a) 話し手が長い間話しているときに聞き手が話し手の発話に随伴するものとして発生する短い発話,(b) 感嘆や笑い(話し手が聞き手に求めているわけでは内が発せられる直接的な感情的なレスポンス),(c) 割り込もうとする試み.Kendonのサンプルではまれだった,(d) 短い質問.pがqに短い応答を求めるとき,の4タイプに分類されている.
  • 随伴シグナルはさらに,(a) p(今の場合聞き手)が話し手の話をフォローしているというシグナル,(b) 承認(point granting),賛同(assenting)などのシグナル,に分類される.
  • 話し手は,聞き手の発するこうしたシグナルに依存している(back channel説とも符合).
  • p(聞き手)がアテンションシグナルを出すときは,pはq(この場合は話し手)をしっかりと見つめる.それに対して賛同の時は目をそらす.実験的にもはっきりと現れている.
  • 感嘆や笑いが発せられるとき,聞き手は話し手の発話のベースラインから逸脱する.頭の位置や顔表情で識別できる.
  • 割り込みの試み.p(聞き手=割り込み者)はq(話し手)の発話時間中に発話を起こす.
  • p(話し手)が発話の中で短い質問を聞き手にする場合は,pはq(聞き手)をしっかりと見つめる.
  • 最後は相互注視.相互注視は共有された感情の覚醒.感情の強さの指標としてはほほえみの強さを用いる.
  • ほほえみは対称的なものであり,相互のほほえみが多く起きる.
  • 微笑みが起きるほど,相互注視にとられる時間は減少する.
  • 分析されたデータでは,異性間の対話では,親密さの増加は覚醒を生みがちであるが,視線回避は起きる.
  • NL(男性)とJH(女性)の対話では,NLのlookingはJHのlookingよりもシャープに相互注視と逆の傾向を示している.換言すれば,相互注視は,JHよりNLに依存して発生している.
  • NLのlookingがNLのほほえみの逆傾向であるさまは,JHのlookingがJHのほほえみの逆傾向であるよりも強く表れている.
  • NLのlookingはJHのsmilingと逆の傾向がある.
  • NLはJHがほほ笑むときは(ほほえむものの)目をそらす傾向にあるので,ほほえみの共有が起きても,相互注視は起きない.(緊密になりすぎないように)cut offをしているという解釈.

References

  • [Kendon 1967] Adam Kendon. Some Functions of Gaze-direction in Social Interaction, Acta Psychologica 26 (1967) 22-63.