会話とはどのような現象か?

人々にとって会話は日常的だ.人々はいつも会話とともに生きているように見える.人々は何のために会話をするのか?人々が会話をする理由はたくさんある.あるときは,情報の交換や何かを決めたりするという目的が存在し,別のときは単に他者との社会的関係の構築や維持をするためであり,習慣的に言葉を交わしているだけのこともある.会話から人々は新しいことを学び,新しいことを考え,新しい物語を作っていく.会話は人々の頭脳を活性化し,健康を増進する.
会話は複雑な現象だ.遠くから見ると,互いの配置を変えながら,ある時は多数の人が集まってcheerfulに,別のときは少数の人が周囲をはばかるように声を潜めたやり取りが行われる.遠くから見ていても会話している人々の間に行われる相互作用はただの通りすがりの人々の間で行われる相互作用とはっきり区別される特徴を持っている.Goffmanはこの二つを「焦点の定まった相互作用」(人々が近接していて,話を交互にしながら注意を単一の焦点に維持しようとはっきり協力し合う場合に起こる相互作用)([Goffman 1963]邦訳 27ページ)と呼び,「焦点の定まらない相互作用」(その場にいる別の人が自分の視野に入る時に,その人を一瞬ちらりと見て,その人に関する情報を集める場合に起こるコミュニケーションである.…相手とただ居合わせたにすぎないような状況をどう処理するかという問題に主として関わってくる.)([Goffman 1963]邦訳 27ページ)と区別している.
もう少し近づいてより高い解像度で会話を観察すると,会話のなかではいろいろなレベルでの出来事が同時進行していることがわかる.中心は発話行為(speech act)と言えるだろう.ミクロにみるとジェスチャなどの非言語行動が円滑な会話を遂行する上に重要な役割を果たすだけでなく,意味も加えている.こうした出来事は,全体を取り巻く,社会ネットワークが構成され,コミュニティの文脈の中で行われ,新たな社会的文脈として積み上げられていく.
Clarkは言語使用を参加者間の創発的な共同行為であるとしてモデル化している.Clark (1996)によれば,言語使用におけるsignalingは,Symbol (describing-as), Index (indicating), Icon (demonstrating)を用いて行われる.
References

  • [Clark 1996] Herbert H. Clark.  Using Language. Cambridge, Cambridge University Press  (1996)
  • [Goffman 1963] Erving Goffman. Behavior in Public Places, The Free Press, New York, 1963. 邦訳: E. ゴッフマン著,丸木恵祐,本名信行訳:集まりの構造 ― 新しい日常行動を求めて,誠信書房,1980.