会話量子を用いた会話コンピューティングの例

会話量子を用いて会話コンピューティングがどう行われるかについて述べる.

(1)の場合.
(1a) 「庭の紹介」会話量子:「この情景はTNの家の庭だ.ナツメの木と,姫リンゴの木が生えている」.情景の中の「ナツメの木」には,「ナツメの木紹介」会話量子と,「姫リンゴの木紹介」会話量子.ここから始まる典型的なイントロダクションの会話量子列とそれが使われる状況の記述.
(1b) 「ナツメの木紹介」会話量子:「このナツメの木は,10年ほど前にTNが買ったものだ.」関連する会話量子として,「ナツメの木の実紹介」会話量子.
(1c) 「ナツメの木の実紹介」会話量子:「このナツメの木には数年前からたくさんの実がなるようになった.」関連する会話量子として.「TNはこのナツメの木の実を好む」会話量子
(1d)「TNはこのナツメの木の実を好む」会話量子:「TNは毎秋このナツメの木の実を食べるのを楽しみにしている」
(1e) 「姫リンゴの木紹介」会話量子:「この姫リンゴの木には毎秋赤い小さな実がなる」

このように,実際の会話量子は,ある話題について,ある粒度で一つまたは複数の,一人または複数の人々の間のやり取りで形成される最小限のやりとりのエッセンスをパッケージにしたものだ.例えば,「この情景はTNの家の庭だ.ナツメの木と,姫リンゴの木が生えている」は1文で表現されているが,A:「ここはどこですか?」,B:「ここはTNの家の庭です」,C:「これはナツメです」,A:[この木は何ですか?」,D:「姫リンゴです」という4人の発話から構成されていてもよい.重要な点は発話は増えても本質的な情報は増えていないこと.

このような例でみると,隣接ペアや,Theme-rhemeペアに近いとも言えるが,会話量子の方がもう少しカバレッジが大きく,個別の会話インスタンスそのものを表しているわけではない.

会話知能の仕事は,相手の様子や話の流れを見ながら,これらの会話量子を主語の話し手ロボットにadaptして,話し手の気分,聞き手の状況などを見ながら動的に繰り出し,dematerializationによって,インタラクティブな行為系列に変換する.

(2)の場合.
(1)の話をしたときのQAを記録すること自体,(2)の域に入り込んでいる.
より一般には,話を聞いて,上記のような会話量子を生成し,眼前にある物理的または仮想的な情景に対応付ける.あとでみたとき,内容が復元できるようにコンテキスト情報を付加することが求められる.単純に,情景と会話を対応付けるだけならさほど難しくはないが,ある程度de-contextualize/generalizationが必要であるし,話者が,deictic gestureを使って,例えば,「昔はここには大きなそよごの木があった」と言ったり,illustrative gestureを使って,「こんな格好をした花壇があった」,「バーベキューのときは,このあたりにテーブルといすを置いて,家族でコンロを囲んだ」,「バーベキューをしたら,煙がたちこめて目がしょぼついた」といった表現をしたとき,それがどのようなものであったかをある程度正確に解釈し,復元する必要がある.

(3)の場合.
さらに,イマジナリーな部分を復元したり,感情や表現に踏み込んだり,提案や解釈や賛否の表現の しかたの工夫をしなければならない.