心理学IB (2014)—会話情報学入門

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  1. 私の研究背景が人工知能なので,人工知能とはどういうものかということから入って,会話情報学に結び付けたい.
  2. 人工知能は最近いろいろと話題になっている.
  3. 人工知能を理解しようとする時,本を読むとか,学会のホームページを見るとか,あるいはWikipediaを見るとか,いろいろな手段があり得るが,人工知能の場合は映画が一番わかりやすい.
  4. なかでもHer(世界で一つの彼女),少し前のEntiranが本質的な話題を含んでいて面白い.
  5. AIは,1956年の「ダートマス会議」が研究元年[西田 2011]
  6. AIの研究開発の歴史は,コンピュータ・情報ネットワークの研究開発の歴史と並行している.コンピュータ出現以前にも人工知能を考えた人はいたが,その考えはうまく実装できなかった.コンピュータ出現で初めて実装ができた.
  7. コンピュータの歴史側から見ると,ユニバーサルマシンとしてのコンピュータが画期的であったこと.指数的発展があったこと.いまや汎用アルゴリズムとデータの時代になりつつあること. 人工知能の方から見ると,発見的探索,知識の表現と利用,機械学習とデータマイニングに進んでいる.ビッグデータと相乗して大きな発展があった.これからは,人間の知的な行動を再現できるようになっていく.
  8. 人工知能の研究の流れの中の成功例を見ると,1997年にチェスの世界チャンピオンに勝ったDeep Blue,クイズ番組のジェパディの人間のチャンピオンに勝ったIBM Watson,火星に行ってミッションを果たしている火星探索ロボット,全米大陸を横断したALVINN,絵画を描いたり音楽の作曲をするシステム等の成功例がある.
  9. 最近は特にニュースが多い.人間の社会への関わりが高まり,人工知能と人間社会の関わりも真剣に議論されるようになってきた.
  10. 図式的に描くと人間社会を構成する個人だけでなく,グループや社会をICTが強化するということになるのであり,AIはその急先鋒となり表面に現れる.
  11. 人間が生きていくためには相互に助け合わなければならないが,人間を支える仕事を少しずつICTが代替する. 結構なことではあるが,諸刃の剣(もろはのつるぎ)であり,負の側面(ダークサイド)もある. これまで人工知能研究は,いわゆるWowファクターを高めようという研究者スピリットにけん引されてきたが,これも改める時期に来ている.
  12. 人間と機械の間の共感的な関係を築き,「君がいてよかったAI」と言ってもらえるようなAIの実現に向かうべきだと思っている.研究者は, ただ人に勝つAIを作ればいいという考え方から,人間社会に貢献するAIを作るというというマインドセットに変化していくことが必要だ.
  13. 例えば,人間力・社会力を強化する人工知能というアプローチ[西田 2014]が求められる.
  14. スーパーインテリジェンスはどんどん進んでいくから,これは人間社会とスーパーインテリジェンスの橋渡しをするAIを作ることになると思っている.
  15. 会話情報学はその中心に位置づけられる. 会話を見る視点は,解像度の取り方に応じていろいろあるが,それを総合する必要がある.
  16. 歴史的にみると,粗い方から次第に解像度を上げていく方向に来ている.物語理解システム,対話システム,音声対話システム,マルチモーダルシステム,会話エージェントになってきている.
  17. そもそも人はなぜ会話をするのか?
  18. 工学の観点から見れば,会話に参加できるロボットをつくることは大きな目標であるが,現実の会話を見ればそれは容易ではないことに気づく.ロボットにはソーシャルシグナルが何重にも飛び交う複雑な場に入っていくことが求められる.
  19. 言語行為論によれば,会話の中心は言語行為であり,それをミクロ,マクロな社会的なインタラクションとつながっている.
  20. さらに共感能力をもつようなエージェントを作るとなれば,それは非常に高度で複雑なものとなり,今の技術でもそう簡単ではない.
  21. これからどのように研究のステップをデザインしていくかは現代の研究者にとって大きな問題である.
  22. 我々はビッグデータを利用すること,はじめは会話のまねごとをするロボットから始め,人間の受け止め方を見ながら,今の技術で人間に意味のあるサービスができる会話ロボットを作ること,少しずつ高度化して行きたいと考えている.
  23. 会話研究チームは総合的でなければならない.分析や構成だけに偏っていてはいけない.研究チームの中で総合的な活動を内包している.
  24. 実験的方法も重要なので,実験設備の充実には特に力を込めてきた.
  25. IMADE:開放型の会話空間であり,実験参加者がそのなかを動き回って会話をする状況を計測できる.
  26. 3D会話丸ごと記録システム:4台ほどのKinectを使って.数メートル四方の中での数名のインタラクションを記録し,視点を任意に動かして会話状況を再現できる.
  27. 角膜イメージング:角膜の反射画像を捉えて,視線および視野を推定する.
  28. 生理指標の取得:心理実験を行う時用いる.多面的に裏付けをとることが重要.
  29. 没入型インタラクション環境(ICIE):視聴覚を再現する壁面と,その中での人間の行動の取得. ICIEとGoogle Street Viewを接続した仮想会話環境, 3D世界の仮想化 , 没入型環境とロボットを接続したテレイグジスタンス, テレイグジスタンス環境でのインストラクションなど話題は多い.
  30. アノテーションのソフト :会話の分析に必要. グループでのアノテーションソフト.
  31. 模倣学習を用いたインタラクションロボット:データマイニングによるインタラクション学習ロボット
  32. 没入型インタラクション環境でのゲームの研究:没入型インタラクション環境でいろいろな実験が構成できる.仮想キャラクタの実在感(志向姿勢)の生成などが研究テーマ.
  33. Virtual basketball:共有仮想空間でのバスケットボール.ゲームプレイにおける人間とエージェントのインタラクションの解明
  34. 討論しながら共同意図を形成するエージェント.重視要因の推定,グループの意見の集約,発散や収束の技法を用いた討論の活性化.
  35. 構成的考証法(Synthetic Evidential Study: SES):演劇的手法を用いた理解の促進
  36. まとめ
    ・人工知能の研究の流れのなかでの会話情報学
    ・研究の背景と目指しているもの
    ・研究の進め方.実験系.
    ・研究において,どのような問いを発し,それにどう答えようとしているのか?

主たる参考書

  1. [西田 2011] 西田豊明.人工知能研究半世紀の歩みと今後の課題,情報管理 Vol. 55, No. 7, pp. 461-471, 2012.
    http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.55.461
  2. [西田 2014] 西田豊明.人間力・社会力を強化する情報通信技術:人工知能を中心に,情報管理 Vol. 57, No. 8, pp. 517-530, 2014.
    http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.517
  3. [Nishida et al 2014] Nishida, T., Nakazawa, A., Ohmoto, Y., Mohammad, Y. Conversational Informatics–A Data-Intensive Approach with Emphasis on Nonverbal Communication, Springer 2014.
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